KindlePaperwhiteケースをレザークラフトで作った
KindlePaperwhiteを買ってからずっと愛用してる。実は購入と同時にケースを買ったのだけど、イマイチな感じだった。久々に無いなら作ってやろう魂が動き出したのでレザークラフトで作ることにした。
ちなみにこれが完成品。
設計
どう作るかを考える
以前いろいろ作ったときもそうだけど、自作の利点は自分の好みどおりの機能を持たせられる点。逆を言えば自分には要らない機能は捨てられる点。考えた結果、以下の点を考慮していく設計にした。
- フリップタイプ
- 使用してないときはディスプレイ保護の為にフリップを閉じれるよう
- Paperwhiteの少しザラつく肌触りのディスプレイが好きなので保護フィルムは使いたくない
- フリップの開閉で自動スリープ/復帰機能を持たせたい
- 調べたら右下にある磁力センサーらしいのでマグネット仕込めば可
- 横開きではなく縦開き
- 市販品は「本」という固定観念から抜けれてないのか横開きばかり
- 縦開きのほうが開けたときのフリップを取り回しやすい
- ケースに入れたままケーブル接続可能
- 収納部のケーブル部分に穴を開ける - 片手(左手)で無理なく持てて、かつページ捲りがしやすい
- バンドタイプのハンドホルダーを付ける - デザイン面
- 無地はつまらないので「知」に関した何かを入れたい
- 最近作りなおした自分のロゴを入れたい - チャレンジ
- コバの仕上げにコバスーパーを使う
- 樹脂的なもので固めるタイプ
- 今まではトコノールとかで磨きまくる手法
- 剛性保持の為にプラ版を仕込んでみよう
制作
下準備と切り出し
昔やってたように寸法を測って、だいたいのイメージにしたらベクタードローイングソフトで図面を作って出力。
縦の長辺がA4を越えてしまったので、半分づつで切ってから貼り合わせるようにして対処。カービングとかで入れるデザインと裏のバンド部分も入れて下絵とアタリ代わりにも使う。今まではこれを厚紙に貼って切りだして型紙としてたけど面倒なのでそのまま行くことにした。
床面を処理した革に定規と鉄筆でアウトラインをつけて、切り出し。最終的には角丸にする予定だけど仕上げで処理するつもりなので切り出しは角ありで。
溝引きと染色
まず最初に縫うときの溝を引いてしまう。後でも良いと思うけど、個人的に溝の色が濃いほうが好きなので染色前にやっておく。
同時に革のヘリも落とす。仕上げでヤスリをかけるけど、ヘリを落としたほうがグっと手触りが良い。ヤスリがけしてコバ処理するときも良い感じになるし。
染色前にカービング。僕の好みであんまりベベラ打ちはしない。溝に色が入れば十分なので、スーベルカッターで切って、エンボス仕上げに押していく程度。文字数が多くてかなり大変だった。ちなみに文字は「人は生まれながらに知ることを欲する」という有名なアリストテレスの形而上学の一説の原文。雰囲気重視で。
写真はないけど自分のロゴはオーダーメイドで作った判子を型押しした。
しっかり乾かしたら染色。カービングダイの茶色。たっぷり塗ったら色の濃淡とムラに注意しながらスポンジで拭いてならす。
ちなみに塗る前にニートフットオイルでムラになりにくくして、染色後はワックスコートでコーティング。仕上げでやっても良いんだけど、この後の工程で退色してしまわないよう一度やっておく。
縫う前の準備
縫ってしまうと処理ができない部分を先に仕上げる。ケース部分の内枠のコバとか、充電ポート用の穴。背面のハンドホルダーのバンドも先に仕上げて付けてしまう。借りに置いてフリップ閉じたときに固定するための磁石も仕込んだ。
背面のバンドは一部をゴムバンド使ったけど、初めてでぶっつけ本番でやったわりには良い感じに行った。耐久性は使ってみないとわからないけど。
プラ版をボンドで接着。フリップの曲がる部分は入れない。縫い合わせても問題ないはずだけど、一応縫いしろより少し内側におさまるように。
さらにその上から手触りを良くするためと保護の為にベロアっぽい肌触りの薄い革を貼る。
縫いと仕上げ
パーツが完成したら、縫うための穴を菱目打ちで空けていく。溝を掘ってあるので特に難しいことはない。
穴が空いたらひたすらに縫っていく。フリップ部の磁石の場所の調整を慎重に行うため、収納部とフリップ部の二度に分けて縫うことにした。
フリップ部の磁石の位置が上手く合ったら最後まで縫う。縫い終わったら作業もほぼ終わり。
角を小さく45度で落とし、コバ全体を荒目、中目、細目の三段階にわけてヤスリがけ。角のアールはヤスリでごりごり付ける。一度軽くトコノールでコバを磨いて滑らかにしたらコバスーパーを塗布。今回は耐久性と接着性を考慮してのこと。最後に全体にワックスコートを塗ったら乾くのを待って、布で磨いて完成。
完成品と所感
完成品の写真はこの記事の最初にあるけど、内側と背面はこんな感じ。
- 成功
- プラ版仕込みは、フリップがしっかりした感じになったのでかなり良かった
- 純粋なレザークラフトからしたら邪道なのかもだけど
- 磁石仕込みもおおむね成功
- 閉じたときは左下でパチっと止まるし、磁力も強すぎないので開けやすい
- 自動スリープ/復帰も申し分なく動作する
- 磁力が強すぎるとフリップを開けて裏に折ったときにも動作してしまう点に苦労した甲斐があった
- 背面バンドも良好
- 縦でも横でもなくナナメで、縦持ちしたときの左下にできる限り近づけるように取り付けたのがかなり良い感じ
- バンドの伸び縮み具合も悪くない - 失敗
- 革の厚みを考慮しなかったのでKindleを入れたらギチギチ気味
- ガバガバよりはマシだけど
- 収納部とディスプレイの穴が不揃い
- 革が変形してしまったのと、保持してる部分が小さすぎること、Kindle自身の厚みを考慮しきれなかった設計が問題
- ケーブルの穴も少しきつい
- 革が柔くなってくれば解決するかもしれない
- フリップが下のつらに合わない
- 縫いしろの考慮を忘れた設計が問題
- 実用には問題ないけど
- ロゴにきれいに色が乗ってない
- 切らずに判子で型押しなので、もっとしっかりと圧力を均等にかけるべきだった
とまあ、そんな感じではあるけど、実用には十分耐えれる出来になった。革の分、重くなってしまったのと厚みと縫いしろの分大きくなっていつも持ち歩くポーチに入れにくくなったけど、ギリ入るので良しとする。ともあれ、今まで使ってた市販のものより格段に使い勝手は上がった。個人的には横開きという固定概念から縦開きの使い勝手の良さに気付いたのがかなり大きなブレークスルーだった。これから大事に愛着持って使っていこうと思う。