最高のGTDを再考する レビューとHorizonLevel

この記事はChallenge Every Month アドベントカレンダー 2019、23日目の記事です。
前回、チャレンジしつづける技術として目標を立てて実行していく方法をまとめたましたが、それをGTDにも応用してみました。何年も続けていたにもかからわず、上手く使いこなせてなかったGTDですが、初心に戻って妥協しないでにもう一度トライしてみたところ、今度は過去最高にまわっています。

前回の記事はこちら
僕のチャレンジしつづける技術 2019 | Trial and Spiral

GTD is何

Getting Things Doneというざっくり言うとタスク管理システムの1つです。Life Hackというのが流行りだした10年ぐらい前にその流れのなにあったものの1つ。パっと見はToDo管理システムですが、タスク、アイデア、具体的なものから曖昧なもの全てを収集し、頭の中(=ワーキングメモリ)から外に出す(=外部記憶化する)ことが特徴で「ストレスフリーの仕事術」とも称されています。

GTDについては日本語版のこちらの書籍が出ています

ただ、残念なことに(おそらく英語の原著も)無駄に冗長に書かれていることもあり、要点がわかりにくい印象を受けました。

一般的に紹介されるGTD像

GTDにはいくつかのステップがあり、特に最初のステップが一番印象的でしょう。それはまず気になることをすべて収集し、インボックスに入れていきます。

特にこのステップは最初の一歩であるにもかかわらず、長い場合は二日かかることもあると言われるほどです。短くても半日は見ておいたほうが良いでしょう。最初からヘビーな作業でありますが、本当に達成感のある作業です。

そして今度はそれを
1. それは何か
2. 行動を起こすべきか? → NO: ゴミ箱・いつかやるリスト・資料のいずれかで整理
3. 次にとる行動は1つではない → NO: プロジェクト化してまとめる
4. 3分以上かかりそう? → NO: すぐ終わらせる
5. 自分がやるべきこと? → NO: 連絡待ちリストへ
6. 特定のタイミングでやること? → NO: 次にやることリストへ
7. YES: カレンダーやリマインダー登録する

というフローに従って機械的に処理していきます。

しかし残念ながら簡単なGTD解説でここまでをフォーカスすることが多く、継続するうえで大切なことには触れられずに終わってしまいます。

まちがったGTD

GTDはアプリありきではありません。ましてやGTDアプリを使いこなす技術ではないのです。

タスク管理アプリは依然として人気がありますし、GTDアプリと謳うタスク管理アプリも少なくありません。ですが、本来紙でもできるGTDをうまくデジタルで表現しやりやすくしてるのがGTDアプリです。えてしてタスク管理アプリは高機能で複雑なのでアプリに振り回されてしまうことも少なくないのが実情です。

GTDを再考する動機

今まずっでとGTDを使いつづけてきたものの、ただの巨大なTODOリストになってしまったり、未処理のアクションで溢れかえってしまったりしていました。

これまでも何度か整理して再度やりなおすことは試みていました。整理しなおした直後は良いものの、しばらくするとまた同じように上手く運用されないリストになってしまいました。

これを解消し、運用しつづけ信頼性をあげ、GTDの本意である「次にやること」を見失なわず、状況によって今できないことにまで気をとられない状況を目指します。

再考する方針

まずちゃんと運用されるようになること。そのためにもう一度GTDとは何か、どのようなものかを考えます。

まずはじめに確実に問題があったレビュー。特に週次レビューがキッチリできていないことが一番の問題です。これをルーティン的に時間を作るようにして、行なうようにしました。具体的には毎週土曜の午前中に近所のカフェに行ってGTDのレビューを集中しておこなう時間にしています。

そして、後述するHorizon levelの高高度からボトムダウンの構造を見直し、目的から目標、行動までを一貫性のあるものにするとともにレビューの負荷をさげます。事実、このレベルの概念がしっかりしておらず、プロジェクトも目標も目的の区別ができていなかったのが問題です。

GTDとはリスト駆動人生と見つけたり

一言で表すならGTDは、人生をリスト駆動に変えるシステムだと言っても過言ではないでしょう。ストレスフリーになることが本質でならば、最初の収集ステップだけで終わるのではなく継続して運用されるシステムである必要があります。

そしてタスク管理システムでとどまっているうちはリスト駆動とは言えません。真にリスト駆動にするために「次にすべきこと」だけにフォーカスできる必要があります。逆に言えば「次にすべきこと」でないことは基本的にフォーカスしなくてよい仕組みにしなければいけません。

GTDにはHorizon Level(旧称:高度モデル)とレビューという要素があります。これらこそ、継続していくうえで大切なポイントです。頭の中のことをひたすら収集した場合、粒度や抽象度が一定ではありません。これを適切にふりわけるため、Horizon Levelを使います。また、常に頭をクリアにするには常に収集し、記録し、リストに移しつづける必要があります。これらを定期的にメンテナンスしつづけるための仕組みとしてレビューがあります。

つまり、Horizon LevelとレビューはGTDをGTDとしてworkさせるためには欠かすことのできない要素なのです。そうしてできた信頼できるリスト郡は強力な道標となり、リストを元に行動しつづけるだけで人生がドライブしていくシステムと成り得るのです。

Horizon Level(旧称:高度モデル)の再考

Horizon Levelは以前は高度モデルと呼ばれていました。名前や名称こそ変わったもののコンセプトは全く同じです。

1番目線の近い「なにをするか」をLevel 0、あるいは地上レベルと言い、そこから上に5段階にわけて抽象度を上げた視点を持ちます。抽象度と高高度から見える視点にあてはめ、高度モデルと言われていました(高レベル高高度ほど抽象度が高く、低くなるほど具体的になる)

  1. Level 0 (0m): 次にとるべき行動
  2. Level 1 (1000m): プロジェクトリスト
  3. Level 2 (2000m): 責任を持つ範囲
  4. Level 3 (3000m): 目標
  5. Level 4 (4000m): ビジョン、構想
  6. Level 5 (5000m): 目的、価値観

最低限日々必要なのはLevel 0と1です。GTDというかToDoとして機能するには具体的にどんな行動をするのかが明確であること。しかし前回、チャレンジの記事でも書いたとおり、目的と目標があることで一貫性と説得力がうまれます。

ここで悩むのが各レベルをどう表現するか。GTDアプリは数多くありますが、レベル要素まで踏みこんだものを見たことがありません。それはどう表現するのかの自由度が高い証拠でもあり、難しいポイントであるとも言えます。

僕のとった施策

僕はOmniFocusを愛用していますが、こう分けました。

単独アクションリスト: Level5 - 目的、価値観
単独アクションリスト: Level4 - ビジョン、構想
単独アクションリスト: Level5 - 目標、KeyResult

フォルダ: Level2 - 責任を持つ範囲、ジャンル
└──プロジェクト: Leve1 - 各プロジェクト
   └──アクション: Level0 - 各アクション

そして、GTDで言及されているレベルの説明では不十分だったのでこのように規定しました。そしてこのレベル要素を取り入れた最大の効能は流れるようにピラミッド型のトップダウンのプランニングが成立することです。

GTDでは「次にやるべきこと」が多く語られるため見失いがちですが、計画はトップダウン、実行はボトムアップが鉄則です。

  1. Level 5 (5000m): 目的、価値観: Objective for Life
    自分の使命に感じること、人生で成し遂げたいこと、生きる意味
  2. Level 4 (4000m): ビジョン、構想: Want to Be
    使命をもとに自分はどうなりたいか、どんな環境に居たいか。want to be。どんな状態にあればLevel5を達成できるか
  3. Level 3 (3000m): 目標: Key Result
    目標、 level4の状態になるには何を達成すべきか。何を達成することがLevel4の要素の「be」の条件として判定できるのか
  4. Level 2 (2000m): 責任を持つ範囲
    責任分野はジャンル分けとして利用する。プロジェクトを作成するときすでに設定された責任分野のどれにあてはまるか悩んでしまうような場合、つまりどれにも当てはまらないような場合は本当にそのプロジェクトが自分に必要なのか再考する。そのための指針として活用する
  5. Level 1 (1000m): プロジェクトリスト
    プロジェクトは複数の行動の結果として達成したいKeyResultの形にする。これはそのプロジェクトがdoneなのかを確実に判定するため。Tipsとして過去形や状態で表すといい
  6. Level 0 (0m): 次にとるべき行動
    行動。これはかならず動詞や「〜する」で表わす。「〜になる」は不可。可能な限り小さな粒度で具体的に書く

6段階がピラミッド構造にありますが、完全な階層構造になりにくくもあります。それは上の階層のものほど抽象度が高く、下の階層のものと直接の親子関係で表しにくく複数の親があてはまるケースもあるためです。
また、上の階層の物は数も多くないこと、抽象度が高いことから、一覧で見たほうが効果的です。したがって、この6階層を厳密な階層構造にネストさせたリストを作るよりはちょっと毛色の違うLevel2で区切ります。

Level5,4,3はそれぞれ見通しが良いのが大事なので、それぞれを一覧のリストで持ちます。
Level2はOmniFocusではフォルダとします。タグ機能でやることも見当しましたがタグでフィルタする機能をメインとして使うため、混同しないようにフォルダにしました。
Level1はプロジェクトとし、アクションリストとしてそのプロジェクトを達成するのに必要なアクションを入れていきます。

もしくはLevel3以上はGTDアプリではないところで管理してもいいかもしれません。レビューの頻度も、更新される頻度も高くありませんし、価値観や大きな目標のため、完了として扱われることがなかなかないためです。

バケットリストを取り入れる

トリガーの他にバケットリストを取りいれるのも効果的です。バケットリストとは別名100のリストとも言い、とにかく人生においてやりたいこと、達成したいことを100個書き出したリストです。
これはやってみると意外に大変ですが、書き出し、白紙の地図に点を打つことで、点と点がつながり見えなかった道筋がぼんやりと浮んできます

バケットリストの利点はそれが実現可能か不可能かはいったん追いておくこと。無意識的に排除してしまっていた本当に自分のやりたかったことを思い出します。抽象度の高い目標が多くなりますが、同時に本当にやりたいことが見えてきます。これをGTDに落としこみ、ふさわしいレベルにわりふっていきます。

レビュー

日次レビューはあまり意識する必要はありません。一日の始まりに今日なにをするべきかを参照します。リストに過不足がある場合、調整します。あとは次にやるべき事リストにしたがって自分をドライブします。

割り込みや思いつきが発生したらその都度inboxに入れていきます。もちろん日次レビューで参照しそれが緊急性の高いものならすぐに処理していきますが、そうでないものはinboxに入れたままでも良いでしょう。

週次レビューこそ大事で絶対に欠かさないようにします。この際に大事なのはinboxを空にすること。一週間のなかで新たにinboxに入れられたものを処理します。残してはいけません。まずはinboxにあるものを最初の収集のステップでやったフローに基づいて処理していきます。

週次レビューでは全てのプロジェクトをレビューします。そのプロジェクトをやる意味があるのか、シーケンシャルなアクションが必要なら順序は適正か、不足したアクションはないか、必要なくなったアクションや達成されたアクションはないか、1つ1つレビューしていきます。

僕のとった施策

カフェに行って集中して一気にやりきるようにしました。
週に1度ルーティン的に時間を作り、その中でレビューしきる。今では週に1度カフェに行く時間さえ作れればGTDレビューが行われた状態にできる、というアクションと望むべき結果が結びついています。GTDのプロジェクトとアクションが常にメンテナンスされていることが大切です。部分的ではなく、全てやりきるのが大切です。

ちなみに僕の場合、1時間程度かかります。けっこう情報整理だけで1時間かかるのはかかりすぎに思っていて、さらに短くしたいと思っています。最初に言ったようにGTDのファーストステップで全ての気になることの収集がちゃんと行われていると単純にプロジェクト数が多いため時間がかかるのは必然です。

ですが、3分以内に終えられるものはレビューの段階で処理しています。GTDの本を読むと提唱者のデビッドアレンさんでも2時間ぐらいかかるらしいです。

運用してみた結果まとめ

まず週次レビューをきっちり欠かしてないこと。これが一番大きくて、リストの信頼感が上がりました。とりあえずGTDのリストを見ておけば良い状態が続いています。
すぐに終わる作業はレビュー時にやってしまうので、以前は簡単だけどなんとなく先のばしにしてしまっていたようなことも減りました。例えば、メールやフォームに書くだけの問い合わせや重要でない連絡なども以前よりちゃんと行うようになった結果、物事が着実に進むようになりました。

家ではなくカフェでやるのは僕にあってるようです。特に気が散らないこと、レビューの中で調べものが発生しても短時間で切り上げ、終わらなかったら別アクションとして切る意識ができたのは良いですね。それとともにレビュー全体でもどれぐらいかかるか時間意識があるのは、全てのプロジェクトを週次でレビューしきる、という点でとても良いです。

そして、Horizon Levelを意識した結果、目標に具体性が生まれ、プロジェクトの完了定義が決まり、次のアクションに集中できています。レビューは今までも課題感ありましたが、Horizon Levelがこんなに重要だとは思ってもいませんでした。GTDの欠けてたピースがハマった感があります。

これからの課題

GTDは期日、見積時間などは設定できてもその精度は自分次第です。僕はまだまだ一週間の中にやりたいことを詰め込みすぎてしまう傾向にあります。この状態がつづくと割れ窓理論のように次第に設定された期日は守られなくなり、期日の意味を失なってしまうでしょう。

また、OKR的に達成目標として設定しすぎてしまうと、ストレッチすぎてさらに見積りオーバーを加速させてしまいそうなので要注意ですね。

最近では「期日」を設定するのも大切ですが、同時に「着手日」を設定するのも重要な気がしています。今のところOmniFocusの普通の運用では着手日を設定する方法がないので工夫が必要そうです。

感想とまとめ

もう何年目になるかわかりませんが、GTDとの再トライでした。目標設定の知見がついたのを応用することで今回はかなり手応えありました。あとは継続あるのみです。

また半年後や一年後、ちゃんと継続できているか、運用が改善されたかふりかえりをしてみたいと思います。進捗のモニタリングは目標達成の鉄則ですからね。

2019年のふりかえり - いろいろなギャップに苦労した一年でした僕のチャレンジしつづける技術 2019